木の風景Woodscape

山口県の山陰側にある長門市で、先代から製材業を継いで生業としている一家が中心市街地で生活を始める。敷地は、駅前の区画整理された場所にある。近くにはかつて賑わっていた商店街、幹線道路沿いに並ぶ大型店舗など、地方都市の風景が広がっている。

かつて市街地で営まれていた製材所は、現在は市街地から10kmほど離れた山に近い場所に位置する。長門の山は、赤松から椎などの広葉樹へ植生の交代があり、山から集まるさまざまな樹種が樹皮、チップ、おが屑、建材、造作材、木細工などに分類加工されていく。その様子は、山と人の営みとが時間をかけて築いた関係そのものだった。この地で製材を生業にすることは、山の生態を理解しながら共存する方法を模索することでもある。

広葉樹材は曲がりやすい樹形のため、2m以下の比較的短い材が取りやすい。造作材のための加工手順の中で、例えば床材は節・変色・虫食いなどで10%ほどの不適格材が出るという。工程の中で生まれる材寸を生かしながら、建築の構法としても利用できるのではないかと考えた。16×110×1100mmという規格材をビスと楔を用いて縦材を挟みながら横材を組み上げる構法は、自由な大きさの連続壁をつくることができる。また、誰でも作業可能であり補修や部分交換などの維持管理も可能である。この計画では、高さをもった大きな部屋が中心にあり、その周りを立体的に部屋が囲み、その架構が一部組壁によって支えられている。組壁は移動に伴って重なり合いながら向こう側が垣間見えるように配置され、内から外・外から内への繋がりを生む。

地域に根差す製材技術とその由来を辿り、建築においてその位置付け方を試行する。中心市街地で建築を通じて製材と組立てを実践し、改めて今日的な姿で生業が垣間見える生活の場をつくることは、日々の営みの由来である豊かな自然の価値を広めることと同時に、生業と周辺のまちとの関係を結び直すことでもあるのではないかと考えている。

所在地
山口県長門市東深川
用途
製材所ギャラリーおよび住宅
工事種別
新築
規模・構造
地上2階・木造
敷地面積
231.29㎡
建築面積
103.70㎡
延床面積
144.87㎡
最高高さ
6.96m
竣工
2016年
建築主
個人
構造設計
桃李舎
施工
シンラテック
写真
山田圭司郎